目 次

◆総論
詳Q1:C型肝炎とはどのようなものですか?
詳Q2:C型肝炎の原因は何ですか?
詳Q3:C型肝炎にウイルスに感染すると、どのような症状が出ますか?

◆診断と検査
詳Q4:C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べるにはどのような検査をするのですか?
詳Q5:「HCV抗体陽性」ということの意味を教えてください。
詳Q6:HCV抗体「高力価」「中力価」「低力価」とは何ですか?
詳Q7:HCVコア抗原検査とはどのようなものですか?
詳Q8:核酸増幅検査(NAT)とはどのようなものですか?
詳Q9:C型肝炎ウイルス抗体検査では偽陽性がありますか?
詳Q10:C型肝炎ウイルス抗体検査では偽陰性がありますか?
詳Q11:ウイルスの遺伝子型とは何ですか?
詳Q12:感染後どのくらいの期間が経てば、C型肝炎ウイルス抗体検査でウイルスに感染したことが分かりますか?
詳Q13:感染後どのくらいの期間が経てば、核酸増幅検査(NAT)でウイルスに感染したことが分かりますか?
詳Q14:どのような人がC型肝炎ウイルスの検査を受ければよいですか?
詳Q15:詳Q15:C型肝炎ウイルス検査を受けるにはどのような方法がありますか?
詳Q16:「老人保健法による肝炎ウイルス検診」について教えてください。
詳Q17:「政府管掌健康保険等における肝炎ウイルス検査」について教えてください。
詳Q18:「保健所等における肝炎ウイルス検査」について教えてください。
詳Q19:C型肝炎ウイルス抗体が陽性であることが分かったら、どうすればいいですか?
詳Q20:肝臓の状態を調べるために医療機関ではどのような検査を行いますか?

◆感染と予防
詳Q21:C型肝炎ウイルスはどのようにして人から人へ感染しますか?
詳Q22:C型肝炎ウイルスは性行為で感染しますか?
詳Q23:C型肝炎ウイルスは夫婦間で感染しますか?
詳Q24:C型肝炎ウイルスは家庭内で感染しますか?
詳Q25:C型肝炎ウイルスは保育所、学校、介護施設などの集団生活の場で感染しますか?
詳Q26:C型肝炎ウイルスは医療行為(歯科医療を含む。)で感染しますか?
詳Q27:C型肝炎ウイルスは輸血(血漿分画製剤を含む。)で感染しますか?
詳Q28:血液製剤の安全性向上のためにどのような予防対策が取られていますか?
詳Q29:核酸増幅検査(NAT)によるスクリーニングは、血液の安全性の向上にどのくらい役立っていますか?
詳Q30:C型肝炎ウイルス感染予防のためのワクチンや免疫グロブリンはありますか?
詳Q31:一度C型肝炎ウイルスに感染したら、違う遺伝子型のC型肝炎ウイルスに感染することはないのでしょうか?

◆母子感染
詳Q32:妊婦はC型肝炎ウイルス抗体を検査しなければいけませんか?
詳Q33:C型肝炎ウイルス持続感染者の母親から生まれた子供への感染のリスクはどのくらいですか?
詳Q34:C型肝炎ウイルス持続感染者の母親からの授乳には注意が必要ですか?
詳Q35:C型肝炎ウイルス持続感染者の母親から生まれた子供には検査が必要ですか?

◆C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)
詳Q36:なぜ多くの人で感染が持続するのでしょうか?
詳Q37:C型肝炎ウイルス持続感染者であることがわかったらどうすればいいですか?
詳Q38:C型肝炎ウイルス持続感染者はどのような経過をたどるのですか?
詳Q39:C型肝炎ウイルス持続感染者であっても肝機能検査値が正常の場合がありますか?
詳Q40:C型肝炎ウイルス持続感染者で肝機能検査値の異常がみられる場合にはどうしたらいいですか?
詳Q41:C型肝炎ウイルス持続感染者の治療には専門医への相談が必要ですか?
詳Q42:C型肝炎ウイルス持続感染者であることがわかりましたが、アルコールはこれまでと同様に飲んでもいいのでしょうか?
詳Q43:C型肝炎ウイルス持続感染者が他人へのウイルス感染を予防するにはどうすればいいですか?
詳Q44:日本にはC型肝炎ウイルス持続感染者がどのくらいいると考えられていますか?

◆治療
詳Q45:C型肝炎はどのように治療しますか?
詳Q46:C型肝炎の治療にはウイルスの遺伝子型を調べる必要がありますか?
詳Q47:インターフェロン療法は効果がありますか?
詳Q48:インターフェロン療法を受けたが効果がなかった場合、再治療を受けることができますか?
詳Q49:インターフェロン療法及びインターフェロンとリバビリンの併用療法の副作用にはどのようなものがありますか?
詳Q50:インターフェロン治療による副作用を軽減する方法にはどのようなものがありますか?
詳Q51:インターフェロンおよびリバビリンを使用した治療は子供にも行えますか?
詳Q52:C型肝炎ウイルス感染により肝臓以外にも症状が出ますか?
詳Q53:治療費用はどのくらいかかりますか?

◆C型肝炎ウイルスと保健医療従事者
詳Q54:針刺し事故によるC型肝炎ウイルス感染のリスクはどのくらいですか?
詳Q55:C型肝炎ウイルス陽性の血液に汚染された針刺し事故を起こした場合どのように対処すればよいですか?
詳Q56:C型肝炎ウイルスに感染している保健医療従事者は仕事上の制限を受けますか?

◆消毒
詳Q57:C型肝炎ウイルス陽性の血液が手指、床、器具などに付着した時は消毒用アルコール(酒精綿)で拭き取ればよいですか?
詳Q58:C型肝炎ウイルス陽性の血液が付着した医療用器具、機材などはどのように消毒したらよいですか?

◆その他
詳Q59:C型肝炎について国が講じている施策を教えてください。

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◆総論

詳Q1:C型肝炎とはどのようなものですか?

 C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって起こる肝臓の病気です。

 肝臓は、 

 などの機能を有し、我々が生きていくためには健康な肝臓であることがとても大切です。

 肝炎になると、肝臓の細胞が壊れて、肝臓の働きが悪くなります。

 肝臓は予備能力が高く、慢性肝炎や肝硬変になっても自覚症状が出ないことが多いことから、「沈黙の臓器」と呼ばれています。このことを正しく認識し、HCVに感染していることがわかったら、症状がなくてもきちんと検査をして、病気を早く発見することが大切です。

 HCVに感染すると、約70%の人がC型肝炎ウイルスの持続感染者(HCVキャリア)となり、放置すると本人が気づかないうちに、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展する場合があるので、注意が必要です。

 つまり、C型慢性肝炎、肝硬変、肝がんは、HCVの感染に起因する一連の疾患であるといえます。

 C型肝炎の特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

詳Q2:C型肝炎の原因は何ですか?

 C型肝炎ウイルス(HCV)の感染による肝炎をC型肝炎と呼びます。

 HCVはかつて非A非B型肝炎ウイルスと呼ばれていたものの1つで、1988年にウイルス遺伝子の断片が見出され、続いてウイルスの本体も明らかにされたことから、C型肝炎ウイルス(HCV)と名付けられました。

 今日では、かつて非A非B型肝炎と呼ばれていたもののほとんどがHCVの感染によるものであることが明らかになっています。

詳Q3:C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、どのような症状が出ますか?

 HCVに感染すると、全身倦怠感に引き続き食欲不振、悪心・嘔吐などの症状が出現することがあります。これらに引き続いて黄疸が出現することもあります。黄疸以外の他覚症状として、肝臓の腫大がみられることがあります。しかしほとんどの場合、自覚症状がないままで経過し、HCVに初めて感染した人の70%前後は持続感染状態に陥る(キャリア化する)ことが知られています。

 何らかの機会にC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかった人の65~70%は、初診時の肝臓の検査によって慢性肝炎と診断されますが、この場合でも、自覚症状がない場合がほとんどです。

 HCVに感染していることがわかったら、自覚症状がない場合でも定期的に肝臓の検査を受け、かかりつけ医の指導の下に健康管理を行い、必要に応じて治療を受けることが大切です。

 詳しくは、かかりつけ医にお尋ね下さい。


◆診断と検査

詳Q4:C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているかどうかを調べるには、どのような検査をするのですか?

 HCVに感染しているかどうかを調べるための検査としては、以下のようなものが用いられています。

 なお、HCVに感染した直後では、身体の中にHCVが存在しても、まだHCV抗体が作られていない(HCV抗体陰性)ことがありますが(HCV抗体のウィンドウ期)、これは新規のHCV感染の発生が少ないわが国ではごくまれなこととされています。

詳Q5:「HCV抗体陽性」ということの意味を教えてください。

 HCVは、直径55~57nmの球形をしたRNA型のウイルスです。ウイルス粒子は二重構造をしており、ウイルスの遺伝子(RNA)とこれを包んでいるヌクレオカプシド(コア粒子)、そして、これを被う外殻(エンベロープ)から成り立っています。

 HCV抗体とは、HCVのコア粒子に対する抗体(HCVコア抗体)、エンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)、HCVが細胞の中で増殖する過程で必要とされるタンパク(非構造タンパク)に対する抗体(NS抗体:C100-3抗体、C-33c抗体、NS5抗体など)のすべてを含む総称です。

 「HCV抗体陽性」と判定された人は、「現在HCVに感染している人(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))」場合と「過去にHCVに感染し、治癒した人(感染既往者)」とに大別されます。 

 一般に、HCVキャリアでは、血液中に放出され続けるHCVの免疫刺激に身体がさらされていることからHCV抗体がたくさん作られています(HCV抗体「高力価」陽性)。

 しかし、抗体を作る能力には個人差があることから、ごく稀に、抗体があまりたくさんは作られていない人(HCV抗体「中力価」陽性)や、少ししか作られていない人(HCV抗体「低力価」陽性)も存在します。

 一方、HCVに急性感染した後に自然に治癒した人や、HCVキャリアであった人がインターフェロン治療などにより、HCVが体内から完全に排除されて治癒した人(HCVの感染既往者)では、年単位の時間をかけて、血液中のHCV抗体は「中力価」~「低力価」陽性へと低下していきます。

 しかし、HCVが体内から排除されて間もない人(インターフェロン治療直後など)では、まだ血液中に多量のHCV抗体が存在する(HCV抗体「高力価」陽性)場合があります。また、逆に、HCVに感染した直後では、身体の中にHCVが存在しても、まだHCV抗体が作られていない(HCV抗体陰性)ことがありますが(HCV抗体のウィンドウ期)、これは新規のHCV感染の発生が少ないわが国ではごくまれなこととされています。

詳Q6:HCV抗体「高力価」「中力価」「低力価」とは何ですか?

 凝集法(粒子の表面に吸着させた抗原と検出しようとする抗体との反応がおこると、粒子間に架橋が生じ、凝集が起こる原理を利用した測定系)による213HCV PHA価または、212HCV PA価以上の高い抗体価を示す群を「高力価」群、25HCV PHA価または24HCV PA価以下の低い抗体価を示す群を「低力価」群、その中間を「中力価」群といいます。

 これまでの検討から、HCV抗体陽性例のうち、HCV抗体「高力価」群では、その98%以上にHCV RNAが検出される(HCVキャリアと判定してよい)こと、また、HCV抗体「低力価」群では、そのほとんどでHCV RNAは検出されない(HCVの感染既往例と判定してよい)ことが明らかとなっています。

詳Q7:HCVコア抗原検査とはどのようなものですか?

 HCVのコア粒子の表面を構成するタンパクがHCVコア抗原です。HCVコア抗原は、外殻(エンベロープ)に被われてHCV粒子の内部に存在することから、そのままでは検出されません。また、感染後のごく早期(HCV抗体のウィンドウ期)の人を除いて、一般にHCVに感染している人の血中には、HCV粒子と共にHCVのコアに対する抗体も多量(高力価)に共存することから、単純に検体(血清)中のウイルスの外殻(エンベロープ)を壊してもすぐにHCVコア抗原と抗体の反応が起きてしまい、検出することができなくなってしまいます。

 このため、HCVコア抗原を検出するためには、検査に先立って、HCV粒子自体と共に、ウイルスに対する抗体(ガンマグロブリン分子)をタンパクの最小単位(ペプチド)の大きさにまで分解する処理をします(前処理)。

 この前処理により、HCVのコアペプチドの抗原活性は残りますが、ガンマグロブリンのペプチドはウイルスに対する抗体活性を失います。

 この性質を利用して、検体(血清)を前処理した後にHCVのコア抗原を酵素抗体法(EIA法)、免疫化学発光法などの手法を用いて検出する方法がHCVコア抗原の検査法です。

 HCVコア抗原を検査する意義としては、下記が挙げられます。

 HCVコア抗原検査は、最近、その感度、特異度が向上したことから、「肝炎ウイルス検診」をはじめ、広く日常検査に利用されています。

詳Q8:核酸増幅検査(NAT)とはどのようなものですか?

 核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:NAT)とは、標的とする遺伝子の一部を試験管内で約1億倍に増やして検出する方法で、基本的には、PCR(Polymerase chain reaction)と呼ばれているものと同じ検査法です。

 この方法をHCVの検出に応用すると、検体(血清)の中に存在するごく微量のHCVの遺伝子(HCV RNA)を感度よく検出できることから、HCV抗体が「中力価」?「低力価」陽性を示す人を、HCVキャリアとHCVの感染既往者とに分けることができるようになりました。また、HCVに感染した直後で、HCV抗体が作られる以前(HCV抗体陰性)の時期(HCV抗体のウィンドウ期)にある人についても的確に診断ができるようになり、輸血用の血液の安全性の向上に役立てられています。

 さらに、臨床の場では、NATにより血液中のHCV RNA量を測定する(定量する)ことができることから、HCVキャリアの経過を適切に把握し、健康管理に役立てたり、抗ウイルス療法を行った際の経過観察や治療効果の判定などに役立てられています。

詳Q9:C型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査では偽陽性がありますか?

 現在認可を受けて市販されている各種のHCV抗体検査の試薬を用いた場合、「正しい意味での偽陽性反応」はほとんどないと言ってよいでしょう。

 しかし、HCV抗体陽性者の中には、「現在HCVに感染している人(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))」と、「過去にHCVに感染し、治癒した人(感染既往者)」とがいることから、HCV抗体検査そのものの精度を上げるだけでは、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であるかどうかの正しい診断はできないことがわかっています。特に、HCV抗体が陽性であっても、HCV抗体「低力価」と判定される群では、そのほとんどでHCV RNAは検出されない(HCVの感染既往例と判定してよい)ことから、必要以上にHCV抗体の検出感度が高い(必要以上に低力価のHCV抗体を検出する)試薬を用いることは意味のないことであると言えます。

 現在では、HCVキャリアとHCV感染既往者とを適切に区別するために、血清中のHCV抗体の量(HCV抗体価)を測定することと、HCVコア抗原検査、および核酸増幅検査(NAT)によりHCV RNAを検出すること、の3つの検査法を組み合わせて判断する方法が一般に採用されています。

詳Q10:C型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査では偽陰性がありますか?

 現在認可を受けて市販されている各種のHCV抗体検査の試薬を用いた場合、感染しているHCVの遺伝子型(ジェノタイプ)にかかわりなく、「正しい意味での偽陰性反応」はほとんどないといってよいでしょう。

 ただし、HCVに感染した直後では、身体の中にHCVが存在しても、まだHCV抗体が作られていない(HCV抗体陰性)ことがあります(HCV抗体のウィンドウ期)ので注意が必要です。

 しかし、新規のHCV感染の発生が少ないわが国では、一般にHCV抗体のウィンドウ期に検査を受けることは、ごく稀なこととされています。

詳Q11:ウイルスの遺伝子型とは何ですか?

 ウイルスの遺伝子型とは、ウイルスの遺伝子を構成する塩基配列の違いをもとに、いくつかの型に分類したものです。

 HCVは、大きく分けて6つの遺伝子型(ジェノタイプ)に分類されていますが、このうち、日本では1bが全体の約70%を占め、次いで2aが約20%、2bが約10%となっており、これ以外の型はごく少数にみられるに過ぎないことが明らかにされています。

詳Q12:感染後どのくらいの期間が経てば、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査でウイルスに感染したことが分かりますか?

 感染したHCVの量によって多少の差はありますが、一般に感染後3ヶ月くらいでHCV抗体は検出されるようになるとされています。

詳Q13:感染後どのくらいの期間が経てば、核酸増幅検査(NAT)でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したことが分かりますか?

 感染成立直後のHCVは、きわめて早いスピードで増殖することがわかっています。例えば、最近のチンパンジーを用いた研究により、感染成立直後では血液中のウイルス量が2倍に増えるために要する時間(ダブリングタイム)は10時間弱、10倍に増えるために要する時間はおよそ1.5日であることがわかりました。

 したがって、HCVに感染してから少なくとも1?2週間後には、核酸増幅検査(NAT)によりHCV RNAは検出可能となります。

詳Q14:どのような人がC型肝炎ウイルス(HCV)の検査を受ければよいですか?

 以下のような方々は、HCV感染の可能性が一般の方々より高いと考えられるため、ウイルス検査を受けることをお勧めします。

  1. . 平成4年(1992年)以前に輸血を受けたことがある(出産時を含む)方
  2. 長期に血液透析を受けている方
  3. 輸入非加熱血液凝固因子製剤を投与されたことがある方
  4. cと同等のリスクを有する非加熱凝固因子製剤を投与されたことがある方
  5. フィブリノゲン製剤(フィブリン糊としての使用を含む。)を投与されたことがある方
  6. 大きな手術を受けたことがある方
  7. 臓器移植を受けたことがある方
  8. 薬物濫用者、入れ墨(タトゥー)をしている方
  9. ボディピアスを施している方
  10. その他(過去に健康診断等で肝機能検査の異常を指摘されているにも関わらず、その後肝炎の検査を実施していない方等)

 フィブリノゲン製剤は、産科の疾患その他で出血が多かった方や、大きな手術をされた方に使われた可能性があります。

 フィブリノゲン製剤が使用された疾患については、http://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0518-2a.html#betu1をご参照ください。

詳Q15:C型肝炎ウイルス(HCV)の検査を受けるには、どのような方法がありますか?

 HCV検査はほとんどの医療機関で受けることができます。特に肝炎が疑われる全身倦怠感や食欲不振、悪心・嘔吐あるいは黄疸といった症状がある場合には、早めに受診されることをお勧めします。

 なお、一般には医療保険が適用となりますが、症状が全くない場合などには自由診療となることもあります。詳細については、検査を希望される医療機関にお問い合わせください。

 また、以下の方法でHCV検査を受けることもできます。

 上記以外にもC型肝炎の検査を行っている場合がありますので、いつも受けている健康診断等の問合せの窓口等にご相談ください。

詳Q16:「老人保健法による肝炎ウイルス検診」について具体的に教えてください。

 老人保健法による肝炎ウイルス検診は、健康診査の対象者のうち、節目検診として、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の節目の年齢に該当する方と、節目外検診として、それ以外の年齢の方で過去に肝機能異常を指摘されたことがある方、広範な外科的処置を受けたことのある方又は妊娠・分娩時に多量に出血したことのある方であって定期的に肝機能検査を受けていない方、及び、基本健康診査でALT(GPT)値により要指導と判定された方が対象であり、対象となった方の希望に基づき実施することになっています。

 この肝炎ウイルス検診は、平成14年度に5カ年の予定で開始されたものであり、平成18年度は、その最終年度に当たることから、これまで節目検診として受診する機会があった方で、何らかの理由で受けることが出来なかった方についても、対象に含めることになっています。

 なお、実施方法等の詳細につきましては、お住まいの市町村の老人保健事業担当課までお問い合わせください。

詳Q17:「政府管掌健康保険等における肝炎ウイルス検査」について教えてください。

 政府管掌健康保険による生活習慣病予防健診を受けることのできる方が対象となります。

 肝炎ウイルス検査は、生活習慣病予防健診の対象者のうち、35歳、40歳、以降5歳間隔の節目の年齢に該当する方と、それ以外の年齢の方で、過去に大きな手術を受けたことのある又は分娩時に多量に出血した過去のある方、過去に肝機能異常を指摘されたことがある方、及び、生活習慣病予防健診でALT(GPT)値が一定値を超えた方が対象です。

 検査は、対象となった方の希望によりおこないます。

 なお、船員保険の生活習慣病予防健診を受ける方も、肝炎検査が受けられます。

 実施方法等の詳細につきましては、お勤めの会社住所地を管轄する社会保険事務局までお問い合わせください。

詳Q18:「保健所等における肝炎ウイルス検査」について教えてください。

 現在、保健所等にて、特定感染症検査等事業として、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒、淋菌感染症の5疾患の検査、及び、HIVについての相談・検査が実施されています。これらの検査とあわせて、平成13年より、40歳以上の希望者に対して、HBs抗原検査、HCV抗体検査を実施するための補助をする制度が創設されました。

 平成18年4月からは、

 という変更をしておりますので、実施方法等の詳細につきましては、お住まいの地域を管轄する保健所にお問い合わせ下さい。

詳Q19:血液検査でC型肝炎ウイルス(HCV)抗体が陽性であることが分かったら、どうすればいいですか?

 まず、HCV RNA検査を受け、「現在ウイルスに感染している(C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア))」のか、「過去にウイルスに感染し、治癒した(=感染既往者)」のかを判別します。「現在ウイルスに感染している」ことがわかった場合には、肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を調べ、直ちに治療を始める必要があるか、当分の間は経過を観察するだけでよいかを決定します。このためには、C型肝炎に詳しい医師による精密検査が必要です。

 詳しくは、かかりつけ医にお尋ね下さい。

詳Q20:肝臓の状態を調べるために、医療機関ではどのような検査を行いますか?

 医療機関では一般に血液検査と超音波(エコー)検査が行われます。

<血液検査>

<超音波(エコー)検査>

肝臓の病期の進展度(ごく初期の慢性肝炎か、肝硬変に近い慢性肝炎かなど)、肝臓内部の異常(がんなど)の有無を調べます。

 これらの検査の結果、必要に応じて次の段階の検査(CT、MRI、血管造影など)を行うこともあります。


◆感染と予防

詳Q21:C型肝炎ウイルス(HCV)はどのようにして人から人へ感染しますか?

 HCVは主に感染している人の血液を介して感染します。

 例えば、以下のような場合には感染する危険性があります。

 上記の行為の中には、そもそも違法なものが含まれています。感染する危険性が極めて高いことは言うまでもありませんが、違法な行為は行わないことが基本です。

 また、以下の場合にも感染する可能性があります。

 常識的な社会生活を心がけていれば、日常生活の場ではHCVに感染することはほとんどないと考えられています。

詳Q22:C型肝炎ウイルス(HCV)は性行為で感染しますか?

 HCVは性行為で感染することはまれとされています。

 しかし、感染しないと断定できるものではなく、他の性行為感染症の予防という観点からも、よく知らない人との性交渉を持つ場合には、コンドームの使用をお勧めします。

詳Q23:C型肝炎ウイルス(HCV)は夫婦間で感染しますか?

 病院に通っているC型慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者さん150人の配偶者を調べたところ、このうちの21人(14%)がHCVキャリアであることがわかりました。また、献血時の検査で見つかった自覚症状のないHCVキャリア50人の配偶者を調べたところ約12%が夫婦ともHCVキャリアであったという結果も得られています。しかし、夫婦に感染しているHCVの遺伝子の配列を相互に比較してみると、大部分のケースでは一致しないことがわかりました。この結果は夫婦間の感染ではなく夫婦それぞれが別々の感染源からHCVに感染したことを示しているといえます。

 つまり、たとえ配偶者がHCVキャリアであっても、ごく常識的な日常生活の習慣を守っているかぎり、夫婦間での感染が起こることはほとんどないと考えてよいでしょう。

詳Q24:C型肝炎ウイルス(HCV)は家庭内で感染しますか?

 HCVの家庭内での感染はまれといわれています。感染が起こるとすれば、それは感染者の血液に直接触れたような場合だけです。

 したがって、以下のようなことに注意すれば、感染のおそれはほとんどないといえます。

詳Q25:C型肝炎ウイルス(HCV)は保育所、学校、介護施設などの集団生活の場で感染しますか?

 一般に、集団生活の場でHCVの感染が起こることはないとされています。

 実際、ある会社において肝炎ウイルス検査を受診した者3,079人を3年間にわたって調べた結果、新たにHCVに感染した人はいなかったという結果が得られています。

 また、ある介護、福祉施設の入所者703人を4年間にわたって調べた結果、新たにHCVに感染した人はいなかったという結果も得られています。

 なお、この703人の中には、25人のHCV感染者が特定されないまま入所していたことがわかっています。

 これらの結果は、ごく常識的な日常生活の習慣を守っているかぎり、HCVキャリアであっても集団生活の場で他人にHCVを感染させることはないことを示していると言えます。

 HCVキャリアであることを理由に、保育所、学校、介護施設などで区別をしたり、入所を断ったりする必然性はありませんし、また、そのようなことは許されることではありません。

詳Q26:C型肝炎ウイルス(HCV)は医療行為(歯科医療を含む)で感染しますか?

 現在、日本で行われている医療行為(歯科医療を含む)でHCVに感染することはまれと考えられています。しかし、まれに医療機関内での感染例や長期間にわたって血液透析を受けている方での感染事例が報告されており、今後も医療機関における感染予防の徹底を図ることが求められています。

詳Q27:C型肝炎ウイルス(HCV)は輸血(血漿分画製剤を含む。)で感染しますか?

 わが国では、平成元年(1989年)11月に全国の日赤血液センターにおいて、HCV感染予防のための検査(HCV C100-3抗体検査)が世界に先がけて導入されました。そして、その後の研究の進歩に合わせて、平成4年(1992年)2月からはより精度の高い検査(HCV抗体検査)にいち早く切り替えられたことから、輸血によるHCVの感染はほとんどみられなくなりました。

 さらに、平成11年(1999年)10月からは核酸増幅検査(NAT)によるHCV RNAの検出が全面的に導入され、血液の安全性は一段と向上しています。

 しかし、HCV感染のごく初期には、NATによっても検出できないごく微量HCVが存在する時期(NATのウィンドウ期)があり、この時期に献血された血液を検査によって除外することはできません。このような血液でも感染源となることから、「検査による血液の安全性の確保」には限界があることをわきまえておくことが必要です。医療者側には、「不要不急の輸血は行わないこと」、いいかえれば「輸血用血液の適正な使用」を守ること、また献血者側には、「HIV、HBV、HCVなど、ウイルス感染の検査を目的とする献血は絶対にしない」ことが求められているといえます。

 なお、平成4年(1992年)以前に輸血(や臓器移植手術)を受けたことがある方は、HCVに感染している可能性があるといえます。

 また、平成6年(1994年)以前にフィブリノゲン製剤の投与を受けた方(フィブリン糊としての使用を含む)、または、昭和63年(1988年)以前に血液凝固第Ⅷ、第Ⅸ因子製剤の投与を受けた方は、これらの製剤の原料(血液)のHCV検査、HCVの不活化が十分になされていないものがありましたので、HCVに感染している可能性があります。

 上記に該当する方は、かかりつけ医に相談の上、HCVの検査を受けることをお勧めします。

 フィブリノゲン製剤は、産科の疾患その他で出血が多かった方や、大きな手術をされた方に使われた可能性があることから、投与を受けたかどうかよくわからない場合でもHCVの検査を受けることをお勧めします。

 フィブリノゲン製剤が使用された可能性がある疾患については、http://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0518-2a.html#betu1をご参照ください。

 現在では、血漿分画製剤(アルブミン、ガンマグロブリン、血液凝固因子製剤など)については、NATによるHCV RNAの検出を含めたスクリーニング検査に加えて、原料血漿の6か月間貯留保管による安全対策や、製造工程におけるウイルスの除去、不活化の措置が行われていることなどから、HCV感染の心配はないといっても差し支えはないでしょう。

詳Q28:血液製剤の安全性向上のためにどのような予防対策が取られていますか?

 現在、感染症検査を目的とした献血者の排除を目的に、献血時の本人確認の徹底や問診の強化、検査・製造体制の充実の観点から、検査精度の向上、保存前白血球除去の開始や分画製剤原料血漿の6ヶ月貯留保管などの総合的な安全対策が実施されています。

 HCVのスクリーニング検査については、1989年11月から世界に先がけてHCV C100-3抗体検査が導入され、輸血後C型肝炎の発生率はそれまでの8.7%から2%にまで減少しました。また、1992年2月からは、その後の研究の進歩に合わせて、より精度の高いHCV抗体検査に切り替えられたことから輸血型C型肝炎はほとんどみられなくなりました。

 さらに1999年10月からは、核酸増幅検査(NAT)によるHCV RNAの検出が全面的に導入されたことから血液の安全性は一段と向上しました。

 しかし、現在のNATによるHCV RNAの検出感度は、102コピー/ml前後であり、これ以上検出感度を上げることは検出系の設計・構造から言っても困難な現状にあります。これに対して、最近チンパンジーを用いた感染実験により、感染初期(HCV抗体ができる前)の血清を用いた場合、HCV RNAの絶対量として10コピーオーダーのHCVを接種すると感染が成立することがわかりました。この結果は、感染後ごく早期(NATのウィンドウ期)に献血された血液は、NATによってもウイルスが検出できずに感染源となってしまうことがあることを示しているといえます。HCVや B型肝炎ウイルス(HBV)、エイズウイルス(HIV)等の検査目的での献血は絶対に避けて下さい。

 また、厚生労働省では、輸血後にC型肝炎に感染していないかどうかを輸血前後の一定期間に検査を行い、念のため確認するよう医療機関に対し求めていますので、輸血医療を受けた場合には、この確認検査を受けていただくようお願いします。詳細については、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」、「輸血療法の実施に関する指針」を参照して下さい。

詳Q29:核酸増幅検査(NAT)によるスクリーニングは、血液の安全性の向上にどれくらい役立っていますか?

 献血された血液500本をプールして1検体としてNATによるスクリーニング(500本プールNAT)を行っていた1999年7月~2000年1月には、2,140,207本の血液の検査が行われ、19本のHBV陽性の血液、8本のHCV陽性の血液が見いだされています。NATを行う検体のプールサイズが500本から50本に変更された(50本プールNAT)2000年2月~2004年7月には24,702,784本の血液の検査が行われ、HBV、HCV、HIV陽性の血液がそれぞれ、473本、72本、8本見出されています。さらに、血液製剤の更なる安全性の向上のために、2004年8月からは20本プールNATに変更され、2005年12月までに6,994,084本の血液の検査が行われ、HBV、HCV、HIV陽性の血液がそれぞれ、133本、13本、4本見出されています。これらのウイルス(HBV、HCV、HIV)陽性の血液は、いずれも免疫血清学的スクリーニング検査(HBs抗原検査、HBc抗体検査、HCV抗体検査、HIV抗体検査)では合格となったものであり、NATによるスクリーニング検査で初めて見つけられたものです。これらの結果は、血液の安全性の向上のためにNATによるスクリーニングが役立っていることを示しているといえます。

 現在、より高感度な次世代試薬の開発のほか、検体の量を増やし、検体中のウイルスを濃縮して、より低濃度のウイルス陽性の血液を検出しようとする検討も行われています。

 しかし、NATによる検出感度をいかに上昇させても、ウイルス感染のごく早期に献血された血液については、検査に頼るだけでは輸血によるウイルス感染を根絶することはできないことがわかっています。

 HBV、HCV、HIV等の検査目的での献血は絶対に「しない」「させない」ことの重要性を周知徹底させることが大切です。

詳Q30:C型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のためのワクチンや免疫グロブリンはありますか?

 残念ながら、HCV感染予防のためのワクチンや免疫グロブリンは、現在までのところ開発されていません。時に、HCVのワクチンについては、今後も開発される見込みは薄いと考えられます。

 これは、HCV粒子の外殻(エンベロープ)タンパクを作る遺伝子(E2/NS-1領域)が変異を起こし易いため、HCVに感染した個体(宿主)がエンベロープに対する抗体(E2/NS-1抗体)を作った時には、ウイルスのエンベロープ(E2/NS-1タンパク)の構造が変わってしまっていることから、一般的な意味での感染防御抗体(中和抗体)としての働きを期待することができないというHCVに特有の性質によります。

 一方、高力価のHCVエンベロープタンパクに対する抗体陽性の大人数の血漿を集めて、ガンマグロブリンを作れば、感染予防に役立つHCVの免疫グロブリンを作ることができるのではないかとの考え方も成り立たないわけではありません。これについても、様々な観点から研究が進められてはいるものの、現在までのところ、実現するには至っていません。

詳Q31:一度C型肝炎ウイルス(HCV)に感染したら、違う遺伝子型のHCVに感染することはないのでしょうか?

 あります。HCVはエンベロープを作る遺伝子(E2/NS-1領域の遺伝子)を変異させて、自己のエンベロープを変えながら持続感染するという性質を持ったウイルスです。したがって、同じ遺伝子型(ジェノタイプ)のHCVであっても、エンベロープに対する抗体は一般的な意味での中和抗体としての働きは持たず、重感染することがあると考えられています。

 実際、HCV感染のハイリスク群に属する違法な静脈注射乱用者の集団を対象として調査したところ、複数の異なるジェノタイプのHCVに同時に感染している例が既に見出されています。

 また、HCVの感染既往者(HCV抗体陽性、HCV RNA陰性の人)に新たにHCVの再感染が起こった例も見出されています。


◆母子感染

詳Q32:妊婦はC型肝炎ウイルス(HCV)抗体を検査しなければいけませんか?

 妊娠しているからといって、HCVに感染する危険が増えるわけではありません。もし妊婦でHCV感染の危険因子(詳Q14参照)を持っているようであれば、一般の方と同様にHCV抗体検査だけでなく、HCVに感染しているかどうかの検査を受けることをお勧めします。

詳Q33:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の母親から生まれた子供への感染のリスクはどのくらいですか?

 HCVキャリアの妊婦84人から生まれた子供87人(3組が双子)を生後1年以上にわたって調べた結果、このうちの2人(2.3%)にだけHCVの感染が起こっていました。なお、HCVに感染した子供も、しなかった子供も、とくに母乳による授乳制限などはしていないことが明らかにされています。このことは、母乳からの感染はほとんどないことを示しているといえます。

 また、別の調査から、子供にHCVの感染が起こってしまった場合でも比較的早期(生後2年以内)にウイルスが身体から排除される場合もあること、また、子供の時は肝臓の病気が進みにくいために、成人してからでもインターフェロンなどによる治療が可能であること、なども明らかになっています。さらに、C型肝炎の治療が急速に進んでいることも朗報です。

 これらのことは、HCVキャリアの女性でも妊娠、出産についてとくに心配する必要はないことを示しているといえるでしょう。

詳Q34:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の母親からの授乳には注意が必要ですか?

 授乳でHCVが感染したとの報告はありません。ただし、HCV陽性の母親で、乳首に傷があったり、出血している場合は、感染する可能性があるので、傷などが治るまでは授乳を控えてください。

詳Q35:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)母親から生まれた子供には検査が必要ですか?

 HCVキャリアの母親から生まれた子供には、母親の胎盤を通して移行するHCV抗体が12ヶ月ぐらいは残存していますので、生後12ヶ月まではHCV抗体検査を行っても感染の有無について判断ができません。もしどうしても生後12ヶ月より前に感染についての結果を知りたい場合は、生後2~3ヶ月経ってから、核酸増幅検査(NAT)によるHCV RNA検査かHCVコア抗原検査を行ってください。しかし、HCVの母子感染率はそれ程高いものではないため、過度に神経質になる必要はないと言えます。


◆C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)

詳Q36:なぜ多くの人で感染が持続するのでしょうか?

 一般に、ウイルスに感染した場合には、ウイルスに対する免疫機序が働いてウイルスの増殖を抑えたり、排除したりすることができるのですが、HCVの場合は、ウイルスの感染防御や排除に関係する(中和抗体が反応する)ウイルスの外殻(エンベロープ)の一部が次々と変異することから、ウイルスを排除する機構が十分に機能しないと考えられています。詳しいメカニズムはまだ十分には解明されていませんが、HCVキャリアの方の血液を調べてみると、ほとんど例外なく高力価のHCVのエンベロープに対する抗体(E2/NS-1タンパクに対する抗体)が検出されることがわかっています。また、年余の長期間にわたってHCVに感染しているチンパンジーの保存血清を調べたところ、HCVのエンベロープタンパクが次々と変異していくのを追いかけるように、変異する前のエンベロープタンパクに対する抗体が次々と作られていることが明らかにされています。いいかえれば、元来中和抗体としての働きを持つエンベロープ抗体の攻撃を逃れるように抗体が反応できないエンベロープに着替えながら(変異しながら)HCVは持続感染状態を続けているといえます。

 HCV感染にはこのような性質があることから、感染を予防するために有効な免疫グロブリンやワクチンは、現在のところ、まだできていません。

詳Q37:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかったらどうすればいいですか?

 献血をした際や各種の検診を受けた際などにHCVキャリアであることが初めてわかった人を定期的に詳しく検査してみると、ほとんどの人の肝臓に「異常」(慢性肝炎)がかくれていることがわかってきました。しかし、大部分の人では、その程度は軽く、直ちに本格的な治療を必要とするほどには進んでいないこともわかっています。

 HCVキャリアであることがわかったら、まず、C型肝炎に詳しい医師による精密検査を受けることから始めてください。そして、ご自身の健康を守るために、以下の事項を守って下さい。

 なお、HCVは、くしゃみ、せき、抱擁、食べ物、飲み物、食器やコップの共用、日常の接触では感染しません。

 また、HCVキャリアだからといって、職場や学校で差別を受けなければならない理由は全くありません。

詳Q38:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)はどのような経過をたどるのですか?

 HCVに初めて感染した場合、その70%前後の人が持続感染状態に陥り(キャリア化)、その後慢性肝炎となる人も多く、さらに一部の人は肝硬変、肝がんへと進行することがわかっています。この経過を示すのに以下のようなデータがあります。

 HCVに持続感染している40歳以上の献血者100人を無作為に選び出すと、選び出した時点で、65~70人が慢性肝炎と診断されます。

 また、献血を契機に見出された自覚症状のないHCVキャリアと、抗ウイルス療法などの積極的治療を受けていなかった通院中のC型慢性肝疾患患者計1,428人の経過観察をもとに、数理モデル(マルコフの過程モデル)を用いて、HCVキャリアの自然史を解析した成績をみると、HCVキャリア100人が適切な治療を受けずに70歳まで過ごした場合、10~16人が肝硬変に、20~25人が肝がんに進行すると予測されています。

 しかし、適切な治療を行うことで病気の進展をとめたり、遅くしたりすることができますので、C型肝炎ウイルスに感染していることが分かった人は、必ず医療機関を定期的に受診して、ご自分の肝臓の状態(肝炎の活動度、病期)を正しく知り、適切に対処するための診断、治療を受けることが大切であるといえます。

詳Q39:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であっても肝機能検査値が正常の場合がありますか?

 あります。C型肝炎患者の肝酵素(ALT(GPT)、AST(GOT))値は変動しますから、ある時は正常値、別のある時は異常高値という場合があります。慢性肝疾患があっても1年以上肝酵素値が正常の方もいます。広島赤十字血液センターで献血をした際に発見された1,020人のHCVキャリア(平均年齢43.5歳)の病院初診時の臨床診断結果は、慢性肝炎530人(52.0%)、肝硬変5人(0.5%)、肝がん1人(0.2%)で、初診の段階では「異常が認められなかった人」、つまり、AST、ALT値が正常値を示し、かつ画像診断上も異常を認めなかった人が483人(47.4%)でした。

 なお、初診の段階でALT値の異常を認めなかったHCVキャリアの集団を2か月に1回の頻度で2年間にわたって追跡したところ、男性では40%、また女性ではその20%にいずれかの検査の時点でALT値の異常が捉えられています。

 肝酵素(ALT、AST)は、肝細胞が壊れた際に血液中に放出され、その値が上昇するもの(逸脱酵素)ですから、検査をした時点でこの数値が正常であっても、肝臓の病期が進んだ状態(肝の線維化が進んだ状態)にある場合もありますので、一度は専門医で精密検査を受けることをお勧めします。

 また、精密検査により異常が認められなかった場合でも、定期的に検査を受け、健康管理に努めることが必要です。

 詳しくは、かかりつけ医にお尋ねください。

詳Q40:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)で肝機能検査値の異常がみられる場合にはどうしたらいいですか?

 HCVキャリアで肝臓機能異常(慢性の炎症)がみつかった人でも、直ちに本格的な治療を必要とするほど進んだものではない場合が半数以上にのぼります。

 しかし、ある程度進んだ慢性肝炎を放置すると、時によっては知らず知らずのうちに肝硬変や肝がんに進展することもあるので注意が必要です。

 初診時の検査で、直ちに本格的な治療を始める必要はないごく軽い慢性肝炎と診断された場合や、特に異常は認められないとされた場合でも、定期的(2?3か月ごと)に検査を受け、新たに肝臓に「異常」が起こっていないかどうかをその都度確認することが大切です。定期的な検査で「異常」がみつかった場合には、かかりつけ医の指示に従って治療を開始することが必要です。

 定期的に受診して、肝臓に「異常」がないことを確かめながら生活することと、他人への感染予防を心がける限り、日常の生活習慣の変更や日常活動の制限などをする必要は全くありません。この場合、もちろん治療の必要もありません。

 詳しくは、かかりつけ医と相談して下さい。

詳Q41:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)の治療には専門医への相談が必要ですか?

 精密検査、治療法選択の相談等のために専門医を受診することが必要です。HCVに感染している人の治療を行う際には、C型肝炎の診断、治療に関する最新の知識、経験によることが望ましいからです。

 献血をした際や各種の検診を受けた際などにHCVキャリアであることが初めてわかった人を定期的に詳しく検査してみるとほとんどの人の肝臓に「異常」(慢性肝炎)がかくれていることがわかってきました。

 医師の診断で肝臓に「異常」(慢性肝炎)がみつかった人でも、直ちに本格的な治療を必要とするほど進んだものではない場合が半数以上にのぼります。しかし、ある程度進んだ慢性肝炎を放置すると、時によっては知らず知らずのうちに肝硬変や肝がんに進展することもあるので注意が必要です。

 初診時に、肝臓に「異常」がみつからなかったり、ごく軽い慢性肝炎で直ちに本格的な治療を始める必要はないとされた場合でも、定期的に(2?3か月ごと)に専門医を受診して検査を受け、新たに肝臓に「異常」が起こっていないかどうかを、その都度確認することが大切です。

 日本肝臓学会では、ブロックごとに肝臓専門医に関する情報をホームページ( http://www.jsh.or.jp/ )上で公開しています。

詳Q42:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかりましたが、アルコールはこれまでと同様に飲んでもいいでしょうか?

 HCVキャリアの人を、飲酒の習慣がある人とない人に分けて比較してみると、飲酒の習慣がある人の方が肝炎の病期はより速く進展することがわかっています。また、かつて「アルコール性肝障害」と診断されていた人たちの多くは、HCVキャリアまたはC型慢性肝炎の人たちが飲酒していたにすぎないこともわかっています。これらのことから、ごく初期のC型慢性肝炎と診断された場合でも、肝臓を保護するために飲酒は可能なかぎり避けることが賢明です。

詳Q43:C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)が他人へのC型肝炎ウイルス(HCV)感染を予防するにはどうすればいいですか?

 HCVキャリアの方は、次のようなことに注意すれば、他人に感染させることはありません。

詳Q44:日本にはC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)がどれくらいいると考えられていますか?

 1995年~2000年の6年間に、全国の日赤血液センターにおいて初めて献血した348.6万人について、2000年時点における年齢に換算して集計した年齢別のHCV抗体陽性率をみると、16~19歳で0.1%、20~29歳で0.2%、30~39歳で0.8%、40~49歳で1.3%、50~59歳で1.8%、60~69歳で3.4%となっています。

 一方、過去に行った抽出調査から、日赤血液センターにおいてHCV抗体陽性であった人の約70%にはHCV RNAが検出され(HCVキャリア)、残りの約30%にはHCV RNAは検出されない(HCVの感染既往者)ことが明らかとなっています。

 これをもとに、全国のHCVキャリア数を試算すると、2000年時点の日本の15歳~69歳の人口約9,200万人中約88.5万人(72.5~104.5万人)のHCVキャリアの方が、自覚しないままの状態で潜在すると推計されました。

 また、献血者のデータがない70歳以上の年齢層におけるHCVキャリア率を3%と仮定し、この年齢層における人口を乗じて算出した数を加えると、日本におけるHCVキャリアの総数は150万人以上にのぼると推計されます。

 なお、新たな感染によるHCVキャリアの発生はごく稀に起こるのみとなっているわが国においては、15歳未満の年代では、HCVキャリアは極めて少数(0.02~0.05%程度)存在するにすぎなくなっています。


◆治療

詳Q45:C型肝炎はどのように治療しますか?

 C型肝炎の治療は、基本的には下記の考え方に従ってすすめられます。

 どの治療方針を選ぶかは、肝炎の活動度(肝細胞破壊の速度)、病期の進展度(肝線維化の程度)、末梢血中のHCV量及び型(セロタイプまたはジェノタイプ)、年齢、全身状態などをもとに、総合的に判断して決定されます。

 抗ウイルス療法(インターフェロン療法、インターフェロンとリバビリンの併用による治療)によりHCVを駆除し、完全治癒を図ることが第1の選択肢となります。

 総合的に判断して、抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や、抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合には、抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンCの静注やウルソデオキシコール酸の内服など)を選択します。

 第1の選択肢の対象とはならず、肝発がんのリスクが高い状態(肝線維化の進展など)にまで進展している場合には、第2の選択肢、すなわち肝庇護療法によると共に第3の選択肢、すなわち画像診断、腫瘍マーカーを用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行い、延命を図ります。

 以上のように、C型肝炎の治療は、適切な診断に基づいて、適切な治療方針を選択して実施することが最も大切であることから、治療方針を決めるにあたっては専門医の関与が必要です。

 詳しくは、かかりつけ医に相談してください。

詳Q46:C型肝炎の治療にはウイルスの遺伝子型を調べる必要がありますか?

 あります。これは、感染しているC型肝炎ウイルス(HCV)の遺伝子型(ジェノタイプ)により、インターフェロン治療を行った場合の有効率に差があること、さらに、治療法も異なるためです。

 血中のHCV量にもよりますが、インターフェロン単独での治療を行った場合、HCVのジェノタイプ1bでは約20%、2aでは約60%、2bでは約40%の人でHCVが駆除され、慢性肝炎が治癒するという成績が得られています。

 ジェノタイプが1bでHCVの量が多いために、インターフェロン治療が有効でなかった例についても、近年再度治療したり、少量のインターフェロンを長期にわたって投与することが認められています。

 再治療により、HCVの駆除に成功する場合もありますし、また、たとえHCVが駆除できない場合でも肝炎の活動度を抑制し、肝臓の線維化進展の抑制、肝発がんのリスク軽減のために有効であることが明らかにされつつあります。

 なお、HCVのジェノタイプは一度確認すれば、再度検査する必要はありません。感染が続く間、別のジェノタイプのHCVに重感染しない限り、途中でジェノタイプが変わることはありません。

 また、感染しているHCVのジェノタイプの違いが、肝炎の予後、肝発がん率などに影響を及ぼすことはないとされています。

詳Q47:インターフェロン療法は効果がありますか?

 インターフェロン単独治療での有効率(ウイルスが完全に駆除される率)は平均すると約30%ですが、近年、抗ウイルス薬であるリバビリンと併用することにより、40~50%の有効率が得られることがわかってきました。

 ただし、抗ウイルス療法(インターフェロン治療や、インターフェロンとリバビリンの併用療法)は、肝臓の病態(活動度や病期など)の正しい診断に基づき、全身状態、年齢なども考慮に入れた総合的な判断をもとに実施することが大切ですので、肝臓専門医の関与の下に行う必要があります。 詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。

 なお、インターフェロンの自己投与を行う場合は、医師の管理指導のもと,溶解時や投与する際の操作方法を正しく修得する必要があることはいうまでもありませんが、使用した注射器や注射針の廃棄時の取扱い、処分方法にも十分注意する必要があります。具体的には、使用した注射器や注射針は、再使用やリキャップ(再び蓋をすること)をせずに、針先が突き出ない蓋つきのビンや缶などに入れて、医療廃棄物として適切に処分するようにしてください。

詳Q48:インターフェロン療法を受けたが効果がなかった場合、再治療を受けることができますか?

 過去にインターフェロン治療を行ったものの、HCVを駆除することができなかった人でも、Q46に述べた諸条件をもとに、インターフェロン治療の適応があると判断された場合には、再治療を受けることができます。

 また、インターフェロン治療によりHCVを完全に駆除できない場合であっても、少量のインターフェロンを長期間にわたって間歇的に投与することにより病期の進展を抑制する効果があることも明らかになっています。

 詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。

詳Q49:インターフェロン療法及びインターフェロンとリバビリンの併用療法の副作用にはどのようなものがありますか?

 インターフェロン療法、インターフェロンとリバビリンの併用療法のいずれを行った場合でも、多くの患者さんに発熱、倦怠感、頭痛、食欲不振、脱毛などが見られます。しかし、通常、これらの副作用は、治療を続けていくと軽くなっていくとされています。特に注意すべき副作用としては、「抑うつ」及び「自殺企図」があります。これらは、不眠や不安感などから始まることが多いようです。また、間質性肺炎、貧血、白血球減少、血小板減少などにも注意が必要です。  

 また、リバビリンには催奇形性があるので、妊婦に投与することはできませんし、男性に投与する場合も、パートナーの方の妊娠を避ける必要があります。

 なお、インターフェロンの単独投与についても、妊婦に対する安全性が確認されていないことから、通常は行われません。

 これらのことから、特にインターフェロン療法やインターフェロンとリバビリン併用療法を受ける際には、十分な知識と経験を持った専門医の指導、あるいはその協力の下に行うことが望ましいといえます。

 詳しくは、かかりつけ医にご相談ください。

詳Q50:インターフェロンによる症状や副作用を軽減する方法にはどのようなものがありますか?

 まず、どういう副作用が出たか、担当医に話しましょう。副作用の一部は、インターフェロンを夜に投与したり、減量したりすることなどによって、軽減することができるという報告もあります。また、インフルエンザ様の症状は、解熱鎮痛薬を投与することによって軽減が図られます。

詳Q51:インターフェロンおよびリバビリンの治療は子供にも行えますか?

 インターフェロン、リバビリンの子供への使用については、使用経験が少なく安全性が確認されていないので、通常は行いません。

 また、子供の場合は病気の進行が遅く、直ちに治療を行う必要性は低いという意見もあります。

 かかりつけ医とよく相談して下さい。

詳Q52:C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により、肝臓以外に症状がでますか?

 HCV感染者の一部で肝臓以外に症状が出ることがあります。代表的なものとしては、例えば、口腔粘膜の扁平苔癬、シェーグレン症候群などが知られています。詳しくは専門医にお尋ねください。

詳Q53:治療費用はどのくらいかかりますか?

 一般的に治療等に必要な医療費は医療保険が適用されますが、自己負担額が高額になった場合は、高額療養費制度の対象となり、一定の基準額を超える部分が保険から給付されます。この基準額(1ヶ月当たりの自己負担限度額)は、一般的には72,300円(所得の高い方は139,800円)に一定の限度額を超えた医療費の1%を加えた額となります。ただし、低所得者の場合は35,400円となります。

 実際に給付を受けられるかどうか、受けられる場合その額はいくらか、どのような申請を行えばよいか等については、加入されている医療保険の保険者(例えば、政府管掌健康保険であれば社会保険事務所、組合管掌健康保険であれば健康保険組合、また国民健康保険であれば市町村等)や医療機関の窓口等にお訊ね下さい。


C型肝炎ウイルスと保健医療従事者

詳Q54:針刺し事故によるC型肝炎ウイルス(HCV)感染のリスクはどのくらいですか?

 保健医療従事者などが、HCVを含む血液に汚染された針刺し事故等を起こした場合、約1.8%の割合でHCVの感染が起こるとの報告があります。

 一般に、感染が成立するかどうかは、汚染源となった血液中のHCVの量と、汚染時に被汚染者の体内に入る血液の量によって規定されます。採血時の注射針など中空になっている針を誤って刺した場合などには、毛細管現象により、比較的多くの血液が体内に入ると考えられることから、相対的に感染するリスクは高くなると考えられます。

詳Q55:C型肝炎ウイルス(HCV)陽性の患者の血液に汚染された針刺し事故を起こした場合どのように対処すればよいですか?

 被汚染者(針刺し事故を起こした本人)は、まず、できるだけすみやかに、流水中で血液を絞り出し(汚染血液の血中への侵入量を最小限にとどめ)た後に、傷口を消毒します。

 次に、被汚染者の血液にHCVが含まれているかどうかを検査します。

 検査は、以下の手順で行います。

 万一感染したことがわかった時には、インターフェロンを投与することにより慢性化(キャリア化)を防止できる場合があることがわかっています。なお、一般のガンマグロブリンの投与は感染予防のための効果はありません。また、汚染直後に感染予防を目的としたインターフェロンの投与も一般には行われていません。

 詳しくは専門医にお尋ねください。

詳Q56:C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している保健医療従事者は仕事上の制限を受けますか?

 HCVに感染している保健医療従事者が、仕事上の制限を受けることはありません。一般に、HCV感染の有無にかかわらず、すべての保健医療従事者は、厳格な無菌操作と手洗いの励行、基本的な感染予防措置を心がけ、注射針など鋭い器具による外傷を負わないように気をつける必要があります。このことを守っている限り、保健医療従事者から患者へHCVが感染するリスクはほとんどありません。


◆消毒

詳Q57:C型肝炎ウイルス(HCV)陽性の血液が手指、床、器具などに付着した時は消毒用アルコール(酒精綿)で拭き取ればよいですか?

 HCV感染予防のためには、消毒用アルコール(酒精綿)で拭き取っただけで十分であるかどうかはわかっていません。少なくともB型肝炎ウイルス(HBV)の感染予防のためには不十分であり、実際に感染が起こった事例が報告されています。

 一般に、血液が床などに付着した場合には、次亜塩素酸ナトリウム液を軽く染ませた雑巾で拭き取った後に、通常の雑巾で拭き取っておくことが必要です。

 なお、血液が付着した手指などに外傷がない場合には、石けんを用いて流水で洗い流しておくだけで十分です。

詳Q58:C型肝炎ウイルス(HCV)陽性の血液が付着した医療用器具、機材などは、どのように消毒したらよいですか?

 まず、器具、機材等は使用後すみやかに流水で十分に洗浄します。

 血液が付着したまま乾燥させると、その後洗浄しても付着した血液のタンパクの除去が困難となり、その中に存在するウイルスを保護して(保護コロイドとしての作用を発揮して)、消毒を行っても感染性が残るもととなります。

 消毒の方法として最も信頼性の高い方法は加熱であり、薬物消毒は加熱できない材質または形状をした器具、機材に対して用います。

 加熱、薬物消毒のいずれも不可能な場合には、洗剤を用いて丹念に流水で洗浄することによってHCVを除去します。

各種の消毒法を要約すると下記のようになります。


◆その他

詳Q59:C型肝炎について国が講じている施策を教えてください。

 C型肝炎をはじめとするウイルス性肝炎の問題は、国民の健康に関わる重要な問題であり、肝炎対策に関する有識者会議報告書においても、「国民が、自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づき必要な診療を受けることが重要」とされています。

 このため、厚生労働省では、平成14年度から「C型肝炎等緊急総合対策」として肝炎対策に取り組んでまいりましたが、今般、C型肝炎治療をめぐる新たな状況等を踏まえて、平成17年3月に「C型肝炎対策等に関する専門家会議」が設置されました。

 同年8月に報告書「C型肝炎対策等の一層の推進について」がとりまとめられたところですが、これを受けて、厚生労働省においては、今後もより一層C型肝炎対策の充実を図ることとし、

 等の施策に取り組んでいます。

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